「うつ病になってしまい、これ以上働くことができない。一人暮らしを続けていけるのだろうか」
「統合失調症の症状が重く、家族は病気への理解がない。実家を出て、生活保護を受けながら一人で暮らすことは可能なのだろうか」
精神疾患を発症すると、これまでの生活を維持することが難しくなり、経済的な問題や将来への強い不安が押し寄せてくるものです。
筆者筆者は精神保健福祉士として、数多くの方の相談をうけてきました。
そこでこの記事では、うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱える方が、生活保護を受給して一人暮らしを始めるための条件や具体的な流れについて、分かりやすく解説していきます。
まずは制度の正しい仕組みを知り、安心して療養できる環境を整えるための一歩を踏み出してみましょう。
うつ病・精神疾患・統合失調症でも生活保護で一人暮らしはできる?

うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱えていても、生活保護を受給して一人暮らしをすることは可能です。
生活保護制度は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するためのセーフティーネットです。これは日本国憲法第25条に規定されている「生存権」の理念に基づいた、国民の正当な権利です。
精神保健福祉士として相談を受けていると、次のような悩みを抱えた方と関わることがあります。
- うつ病や統合失調症の症状により、働くことが難しくなった
- 家族との同居に限界を感じている
- 一人暮らしをしたいが、生活費や住まいが不安
- 生活保護を受けながら一人暮らしできるのか知りたい
筆者このような不安を抱える方は、決して少なくありません。
実際、精神疾患があるからといって、必ず施設や実家で生活しなければならないわけではありません。
体調や生活状況に応じて、通院や服薬を続けながら、地域で一人暮らしをしている方もいます。
医療の進歩により、適切な治療や薬の開発が進み、病気を抱えながら自立して暮らせる人は増えています。
筆者さらに、次のような福祉サービスを組み合わせることも可能です。
- 訪問看護
- ホームヘルパーによる家事援助
- 相談支援
- デイケア
- 就労支援
こうした支援を利用すれば、一人暮らしの不安を減らしながら、少しずつ生活を整えていけるでしょう。
精神疾患の治療には、どうしても一定の時間が必要になるため、経済的な焦りをなくし、安心して休める住まいを確保することが重要です。
筆者住まいと生活が安定すると、病気からの回復や将来的な自立も目指しやすくなります。
生活保護は、決して諦めの選択ではなく、うつ病や統合失調症などで今すぐ働くことが難しい方が、生活を立て直すために使える制度ということを覚えておいてください。
そして、あなたらしい暮らしを取り戻すための大切な土台にもなります。
現場で感じる、精神疾患で一人暮らしが難しくなる理由とは?

精神保健福祉士として相談現場で感じることは、精神疾患を抱えながら一人暮らしを維持することは、健康な時には想像もつかないほどの困難が伴うということです。
筆者精神疾患とは、他人には見えませんが心に怪我をおっている「見えない怪我人」といえます。
加えて、人生の過程で傷をつき、不安が高かったり被害的になったり、人を頼れなかったり、信頼を失っている人が多いです。
こうした精神の不調は、「貧困や孤立などの生活上の課題」「失業などの経済的影響」が互いに絡み合う負の連鎖(スパイラル)を引き起こし、日々の生活を急激に困難にさせてしまいます。
筆者以下、現場でよくお聞きする一人暮らしが困難な2つの理由を解説します。
理由① 働きたくても体調が安定せず、収入が途切れることがある
両方の疾病とも共通していることとして、当事者からは「身体の機能が停止したように感じられ、思うように動けない」と話す方が多いです。
- ▶うつ病の場合
-
睡眠は浅く、朝は体が鉛のように重くて起き上がれません。
人と会う気力がなくなり、仕事など気を遣う場面に行くことが難しくなります。
さらに自責感・劣等感・自己卑下といった感情が強く、非常に不安定で体調を崩しやすくなります。 - ▶統合失調症の場合
-
幻聴や妄想といった陽性症状が活発になる時期や、意欲が著しく低下して感情が平板になる陰性症状の時期があり、思考をまとめること自体が困難になります。
このような状態では、たとえ本人が「働きたい」「お金を稼がなければならない」と願っていても、安定してシフトに入ることや、課せられた業務をこなすことが難しくなってしまいます。
理由② 家賃・生活費・通院費の不安を一人で抱えやすい
一人暮らしでは、家賃や水道光熱費、食費、通院費、薬代、通信費などを基本的に自分の収入でまかなう必要があります。
物価高の現在では、節約しても月12万〜13万円ほど必要になる方も多いでしょう。
しかし、うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱えながら、安定した収入を得ることは簡単ではありません。
筆者精神保健福祉士として相談を受けていると、お金の不安が症状を悪化させていると感じる場面があります。
生活費が足りない不安や家賃滞納の恐怖が強くなると、相談窓口へ行く気力も失われやすくなります。
また、家族も生活に困っていたり、家庭内の関係が悪化していたりして、親族を頼れないケースも少なくありません。
以上二つの理由を見ても、
家賃や生活費、通院費の不安は一人で抱え込まず、早い段階で生活保護や福祉サービスの利用を相談することが大切です。
精神疾患がある人が生活保護を受けるために確認されること

うつ病や統合失調症などの精神疾患がある場合でも、生活に困窮していれば生活保護を申請できます。
筆者ただし、生活保護は病名だけで受給できるかどうかが決まる制度ではありません。
福祉事務所では、主に以下のような点を確認したうえで、生活保護が必要かどうかを判断します。
- 現在の病名や通院状況
- 働ける状態かどうか
- 現在の収入や預貯金
- 家賃や生活費の状況
- 家族から援助を受けられるか
ここでは、精神疾患がある方が生活保護を申請する際に確認されやすいポイントを解説します。
確認① 病名・通院状況・現在の生活状況
まず確認されるのは、病名や通院状況、現在の生活状況です。
うつ病や統合失調症などの精神疾患を患っており、働けない状態の方は、治療等を優先する必要があります。
そのため、保護申請書には病歴として「病名」「いつから通院しているか」「入院の有無」などを記載・確認されることがあります。
ただし、病名があるだけで自動的に生活保護を受けられるわけではありません。
筆者大切なのは、その病気によって現在の生活にどのような影響が出ているかです。
たとえば、以下のような状況があれば、申請時に具体的に伝えることが大切です。
- 症状により働くことが難しい
- 家賃や生活費を支払えない
- 通院を続けながら一人暮らしを維持することが難しい
- 家事や金銭管理が負担になっている
- 家族に頼れない、または同居が難しい
また、現在の住まいや世帯状況、生活保護を申請する理由なども確認されます。
暮らし向き、つまり生活の様子や家計の状態を具体的に確認するために、ケースワーカーが家庭訪問を行い、必要なことがらを聞かれる場合もあります。
確認② 収入・資産・家族からの援助の有無
次に確認されるのが、収入・資産・家族からの援助の有無です。
生活保護では、世帯の収入と最低生活費を比較し、収入が最低生活費に満たない場合に保護が必要かどうかを判断します。
そのため、福祉事務所では、以下のような点を確認します。
- 現在の就労内容
- 給与や年金などの収入
- 預貯金や保険などの資産
- 家族からの仕送りや援助の有無
- 他に利用できる制度があるか
収入には、働いて得た収入のほか、年金等による収入、仕送りによる収入なども含まれます。
資産については、預貯金、生命保険の解約返戻金、貴金属、株券、土地・建物などの不動産、自動車など、生活費に充てられるものがあるかどうかを確認されます。
有価証券の口座については解約を求められたり、暗号資産についても売却を求められたりする場合があります。
筆者ただし、すべての資産を必ず手放さなければならないわけではありません。
処分価値が高くない居住用不動産は、保有が認められる場合があります。
自動車についても原則として保有は難しいものの、通勤や通院などの事情により、例外的に認められることもあります。
家族からの援助については、扶養照会が行われる場合があります。
扶養照会とは、親族から援助を受けられるかどうかを確認する手続きです。
ただし、親族の扶養は可能な範囲で行うものであり、家族に援助できる余裕がない場合や、援助を受けることが難しい事情がある場合もあります。
筆者精神疾患を抱える方からは、「家族に連絡が行くのが嫌で申請できない」という不安の声も多く聞かれます。
特に以下のような事情がある場合は、申請時に伝えておくことが大切です。
- 家族との関係が悪く、援助を頼めない
- 家族に病気や生活状況を知られたくない
- DVや虐待などの事情がある
- 家族に連絡されることで体調が悪化する不安がある
- 家族自身も生活に困っている
現在は運用の緩和が進んでおりますが、ケースワークの現場によっては、親族への確認が行われることもあります。
そのため、家族への連絡に強い不安がある場合や、過去にDV・虐待・著しい関係悪化などの事情がある場合は、申請時にその理由をできるだけ具体的に伝えることが大切です。
一人で説明することが難しい場合は、支援者や相談窓口に相談しながら進めるとよいでしょう。
一人暮らしで生活保護を受けると生活費・家賃・医療費が支援される

一人暮らしで生活保護を受ける場合、以下のような費用が必要に応じて支援されます。
- 食費や光熱費などにあてる「生活扶助」
- アパートなどの家賃にあてる「住宅扶助」
- 通院や薬代に関する「医療扶助」 など
ただし、生活保護費は一律ではありません。
生活保護費は住んでいる地域、年齢、家賃、障害の有無、収入の有無などによって金額は変わります。
たとえば、20〜59歳の一人暮らしの場合、令和8年4月時点の生活扶助基準の第1類は、1級地-1で月46,930円、2級地-1で月43,640円、3級地-1で月41,290円です。ここに、世帯人数ごとの第2類基準額や加算、住宅扶助などが組み合わされます。
筆者住宅扶助は、実際に支払っている家賃について、定められた範囲内で実費相当が支給されるものです。
東京都の単身世帯の例では、1級地で月53,700円、2級地で月45,000円、3級地で月40,900円が目安とされています。
1都3県で一人暮らしをする場合、とくに確認しておきたいのは家賃の上限です。おおよその目安は以下のとおりです。
| 地域 | 単身世帯の住宅扶助上限の目安 |
|---|---|
| 東京都内 | 月40,900円〜53,700円程度 |
| 神奈川県内 | 月36,000円〜52,000円程度 |
| 埼玉県内 | 月37,000円〜47,700円程度 |
| 千葉県内 | 月37,000円〜46,000円程度 |
上記はあくまで目安です。同じ都県内でも、市区町村や級地によって住宅扶助の上限は異なります。
たとえば、東京都23区など家賃相場が高い地域では上限が高く設定される一方、郊外の地域では上限が低くなる場合があります。
現在住んでいる物件の家賃が住宅扶助の上限を超えている場合、すぐに退去しなければならないとは限りませんが、状況によっては転居を求められる可能性もあります。
うつ病や統合失調症などで通院を続けている方にとっては、家賃だけでなく、通院しやすい場所に住めるかどうかも大切です。
| 生活を営む上で生じる費用 | 扶助の種類 | 支給内容 |
|---|---|---|
| 日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱水費等) | 生活扶助 | 基準額は、(1)食費等の個人的費用(年齢別に算定)(2)光熱水費等の世帯共通的費用を合算して算出。(世帯人員別に算定)10月から4月までのうち、地域に応じて5ヶ月から7ヶ月間冬季加算を支給。 特定の世帯には加算があります。(障害者加算等) |
| アパート等の家賃等 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 義務教育を受けるために必要な学用品費等 | 教育扶助 | 定められた基準額(一部、定められた範囲内で実費)を支給 |
| 医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
| 介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
| 出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 就労に必要な技能の修得等にかかる費用(高等学校等に就学するための費用を含む) | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費(高等学校等に就学するための費用の一部は定められた基準額)を支給 |
| 葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
厚生労働省:生活保護制度より引用
生活保護を申請する前に準備しておきたいこと

生活保護を受給するまでには、以下のような流れとなります。
福祉事務所(役所の生活保護課など)の窓口へ、生活保護を受給したい旨を相談へ行きます。
生活保護を受給するための申請書類を作成・提出します。
職員が生活や資産の状況を調査し、生活保護を受給できるかどうかを審査します。
生活保護が開始決定した場合には、保護費の支給が始まり、ケースワーカーによる支援が開始されます。
※①の相談にて、窓口で職員から申請書類などを受け取り、必要な添付書類についても説明を受けます。
書類の種類はたくさんあり、一度持ち帰って準備をして、再び窓口へ出向き提出するという形が一般的です(郵送での提出も可能です)。
収入・家賃・生活費・通院状況を整理する
生活保護の審査のために、担当者は、あなたの「現在の困窮度」を客観的なデータで把握したいと考えています。
そのため、最新情報に記帳された預金通帳や、給与明細書、賃貸借契約書、さらに病歴も含めた履歴書などの提出が求められます。
一人で福祉事務所に行くのが不安な場合は支援先に相談する
生活保護が必要となっている状態では、すでに自力で相談に行くことも難しいケースは少なくありません。
さらに、迷惑行為や悪質クレームを受けた自治体の職員の配属先で際立って多いのが生活保護関連であり、どうしても自治体窓口は、警戒心からか他課と比べて独特の雰囲気を持つ窓口になってしまいます。
そこでプライベートな状況を説明することは、精神障害者にとって想像を絶するほどのエネルギーを消費します。
筆者だからこそ、つながりある支援機関を頼り、生活保護申請について相談することが大切です。
例えば、通院先医療機関には医療ソーシャルワーカーや精神保健福祉士という生活の相談に乗ってくれる専門職がいます。
「生活費に困っていて生活保護を考えている」と伝えていただければ、申請の段取りを教えてくれたり、地域の福祉事務所と連携を取ってくれたりします。
ほかにも、本人の権利を守るために、面接への同行や書類作成を代行・サポートしてくれる専門の民間支援組織が存在します。
精神保健福祉士が感じる「生活保護を受けながら一人暮らしを続けるために大切なこと」

精神疾患を抱えていると、どうしても社会の中で生きることに大きな気後れを持ってしまいます。
それは、精神疾患とはそういう病気であり、過敏さがゆえに人間に対して距離を取らざるをえないからです。
退院して外来通院中の人も、あるいは入院経験のない外来通院者も、家庭で一人、あるは家族とだけ過ごしているのなら、それよりは同年輩の人々と一緒に過ごす時間を持てるデイケアなどのプログラムに参加する方が明らかに望ましいと思っています。
自立して社会生活を行うためには、以下の点が大切になります。
- 年金受給、生活保護受給で経済的に安定している
- 病状が安定し、無理なく通院ができている
- デイケア、作業療法、自助会などを利用している
- アルバイトなど少なくても良いので就労することができている
経済的基盤が安定することに加えて、躊躇はあると思いますが集団生活の中でリカバリーに努めること、そして無理のない就労を続けることが、生活保護を受けながら一人暮らしを続けるために大切と言えます。
うつ病・精神疾患で生活や住まいに困っている方はリサーチへご相談ください

ここまで解説してきたように、うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱えながらでも、生活保護という公的制度を正しく活用すれば、安心して一人暮らしを送り、治療に専念できる環境を手に入れることができます。
しかしどうしてよいかわからず、一人で立ち尽くしてしまっている方も多いでしょう。
- 「体調が悪くて、自分で役所の場所を調べることすらできない」
- 「制度が難しくてよくわからない」
- 「窓口で上手く説明できる自信がない」
- 「どうやって新しい部屋を探せばいいのか分からない」
このような方は、ぜひ私たち「生活保護支援相談所リサーチ」にご相談ください。
生活保護支援相談所リサーチでは、精神疾患を抱え、日々の生活や住まいに深刻なお困りごとを抱えている当事者の方を対象に、包括的な無料サポートを行っております。
これまで本記事で解説してきた、生活保護の申請準備からその後の生活開始まで、専門知識を持ったスタッフがあなたの隣に寄り添い、全力でバックアップいたします。
秘密は厳守いたしますので、ご家族からのご相談も歓迎です。
まずは一歩、あなたの安心できる未来のために、「生活保護支援相談所リサーチ」へお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。お待ちしております。



